モンゴル語の研究に手を染めて数年が過ぎました。つねづね思うのは、コンピュータで自由にモンゴル語の処理ができたら、どんなに便利だろうということです。
多言語環境といえば普通は Windows や Mac という選択になるのでしょう。しかし、こいつらは、ただ文字を打ち込んで、それを印刷するだけの能しかない。他のことができないわけじゃありませんが、貧弱だなあと思います。画面に文字が出ただけで喜んでいられるのは最初だけです。コンピュータでコンピュータにしかできない仕事をしようと思ったら、既存のアプリケーションだけでは足りない筈です。足りていると思っている人は、コンピュータを単なるタイプライター(清書マシン)だと位置づけている人でしょう。(清書マシンで悪いと言うつもりはありません。もったいない、とは思いますけど。)
足りない機能を自分でつけ加えようと思ったら、 Windows や Mac では高度な知識が必要になります。つまり、自由度が極めて低い。でも、私は「自由に」モンゴル語の処理がしたいのです。
実際、印刷ということだけなら、最近では、モンゴル語の扱えるワープロとかも売っています。しかし、その多くはデータ形式に不満があって、使う気になれません。誤解している人が多い様なので、はっきり言っておきますが、データの汎用性というのは、単に他の人とデータのやり取りができる、というだけでは駄目です。骨までしゃぶれる様にデータが作ってある必要があるのです。
にも関わらず、モンゴル文字の場合、データの形式そのものに、そもそも情報落ちがあることが多い。(この辺の詳しい話は『モンゴル語電子化計画』の中の 【北大方正モンゴル語ワープロとの互換性】 などを読んで下さい。)キリル文字は、まあいいとしても(これだって問題がないわけじゃありませんが)、モンゴル文字の場合、その特質を考慮していないデータ形式は、データの利用価値を半減させてしまいます。特に「モンゴル語」そのものの研究をしている私には、影響が甚大です。ですから、汎用性を考慮していない電子化を、私は電子化とは称びたくありません。「モンゴル文化」とか「モンゴル史」とかなら、データ形式にここまでこだわる必要はないかも知れませんけど。
この様に、「データ形式」と「自由な処理」という二点で、既存のモンゴル語ソフト(またはハード)には問題があります。そんな中で唯一、ベルリン自由大学の Oliver Corff氏による Mongolian Language Support (MLS)が、私のこだわりにかなり近いものを持っています。
しかし、MLS だけでは足りないものが沢山あります。でも、それが整うのを待っていたら、いつになるか判らないし、私が欲しいのは「とりあえず、すぐ使えるもの」であって「完璧な製品」である必要はありません。だったら、自分で作ってしまうのが早道です。
そういうわけで、これは第一に「私に便利なもの」として存在します。ですから、他の人には使いにくい部分も多い(例えば致元式のキリル文字転写など)でしょう。しかし、モンゴル語の複雑なテキスト処理を行ないたい人には、非常に便利なものです。他に類似のツールは存在しない(キリル文字関係のツールは、それなりに出まわっていると思いますが、私はキリル文字・モンゴル文字両方が使えるツールにこだわっています。)と思うので、多少の使いにくさを克服するだけの意味はあると思います。
また、モンゴル語の電子辞書は、それだけで大きな価値がある筈です。或いは付属の TrueType フォントだけを利用するのもいいでしょう。『モンゴル語電子化計画』の総てを把握し使用する必要はありません。好きなところだけをつまみ食いして下さい。
ええと、これを公開してみたところ、「いまさらDOSかよー」という冷ややかな反応がありました。予想していなかったことではありませんが、ちょっと残念です。
多くの人にとってDOSというのは、単に「古いもの・難しいもの」というイメージでしか受け取られていない様です。DOSと聞いただけで、時代遅れだとバカにする人さえいます。しかし、そういうことを言う人に限って、DOSのことをよく知らないんじゃないでしょうか。ウィンドウズは確かに便利ですが、万能ではありません。私は、「DOSが得意な分野はDOSで、ウィンドウズが得意な分野はウィンドウズで(Macでも可)」と考えています。
勿論、DOSは万人向きとは言えません。でも、ウィンドウズは万人向きですか?見かけや、初めのとっつき易さだけで判断できるのでしょうか。それは例えば、「同じ漢字を使っているから日本人には中国語は易しい」とか、「文法が似ているからモンゴル語は簡単」とか言っているのと同じだと思います。ウィンドウズを縦横に使いこなすというのは、DOSと同じくらい難しいことです。
ウィンドウズは簡単、と言いますが、それは押し着せのソフトを押し着せの方法で使っている限りのことです。モンゴル語の様に、押し着せのソフトが極めて少ない言語を用いる場合、ウィンドウズというのは却って素人には難しいものになってしまいます。自分でプログラムが組める様な人は別ですが、一般の人が自由にテキスト処理を行ないたい時は、DOS(或いはUNIX)を用いるのが結局は楽です。
これは逆に言えば、テキスト処理をするだけなら、ウィンドウズの様な重たいシステムは不必要だということでもあります。DOS や UNIX 上で簡単に実現できることを、無理にウィンドウズでやる意味はありません。便利そうだけれど小回りのきかないそれは、例えばコンビニに買い物に行くのにタクシーを呼ぶ様なものです。
一方、印刷の様にビジュアルな処理が必要なものは、ウィンドウズの方が数段勝っているでしょう。それまでをDOSでやれ、とは私は言いません。大事なのは、それぞれの特質を理解してコンピュータを使うということです。
それぞれ利点も欠点もあるのですから、単にDOSとウィンドウズの優劣を語っても無意味です(例えば自転車とタクシーの優劣を語っても無意味な様に)。コンピュータは道具なのですから、その時その時で一番使い易い道具を用いればいいだけです。つまり私が提案しているのは、「適材適所」という極めて当たり前のことです。タクシーの後ろにのっかっているだけで済むと思っている人に、無理に自転車の練習をしろとは言いませんけど。
それから、『モンゴル語電子化計画』はDOS専用ではありません。その辺も解ってもらえていないらしかったので、念の為につけ加えておきます。
| ・モンゴル語電子化計画 (第一弾) Ver.1.4.1 ====== モンゴル語電子辞書とか ====== (2004/Jul/25) | |
|---|---|
It includes search system , spell checker and TrueType fonts. | |
| 辞書、スクリプトなどのアーカイブは、このページから | |
| If you want archives, go to this page. | |
| モンゴル語電子化計画・第二弾 「DOSでモンゴル語」 | |
| モンゴル語電子化計画・第三弾 「UNIXでモンゴル語」 | |
モンゴル語を電算処理する為の環境を整えて行く遠大な計画。それが「モンゴル語電子化計画」です。
その第一弾として、モンゴル語の電子辞書を中心に、モンゴル文字の特質を考慮した検索システムやスペルチェッカー、印刷システムなどを作ってみました。まだまだ満足の行くものではありませんので、折りある毎に改訂して行く予定です。
・ モンゴル文字は、綴り字の形からだけでは読み方が特定しにくいですが、曖昧検索機能(t,d や o,u の同一視など)がありますので、不正確な読み方でも目的の単語が探せます。
・ モンゴル語の類義語・反義語辞典としても使えます。ハイパー・テキストの様に関連語を辿って検索することもできます。
・ 恐らく、ネットワークで公開されている世界唯一のモンゴル語電子辞書です。(未確認。でも、これだけ大規模なものは他にないと思います。)
・ データは総てテキスト・ファイルですので、汎用性が高く、簡単に加工できます。ですから、この辞書と同じ形式でデータを作れば、
誤解していらっしゃる方がいるみたいですが、 MLS が必要なわけではありません。『モンゴル語電子化計画』は MLS とは全く独立したものです。
スペルチェッカーや、 TrueType fonts については、それぞれのページをご覧下さい。 ただ、そのページだけ読んでも解りにくいかも知れません。なるべく、 「懇切丁寧な解説」 を頭から順番に 読んで下さい。(ハイパーテキストになっている意味がないですね。)
一応、「"1/10マニュアル"」も用意してあります。これは使い方だけを簡単にまとめたものですので、時間のない人や、一通り「懇切丁寧」を読んだ方に便利でしょう。
また、Q&A も作ってみました。参考にして下さい。
| HTML ファイルを普通のテキストに変換するスクリプト |
|---|
| Tag remover from HTML file |
今回、マニュアルは HTML 形式で書きましたが、 DOS 上でこのツール群を使用する際には HTML 形式のマニュアルは、ごちゃごちゃタグがうるさくて却って不便です。DOS の HTMLブラウザでもあればいいのですが、私は見たことがありません。そこで、HTML ファイルからタグを取り去って読み易くする SED スクリプトを用意しました。
最近は、もっとデキのいいツールが出回っているみたいですので、そちらを
利用したほうがいいかも知れません。
| ・キリル文字の表記法について |
|---|
| How to write Mongolian by Latin alphabet |
電子メディア上でモンゴル語を扱う際に、まず問題になるのは「モンゴル語をどの様に表記するか」ということでしょう。モンゴル語の扱えるワープロもありますが、ファイル形式に互換性がない(そのワープロでしか使えない)場合が多い様です。
資源の共有・再利用ができなければ、電子化する意義は半減してしまいます。そこでモンゴル語を表記するには、英数字という最も互換性が高いと思われる文字だけを用い、やはり最も互換性が高いと思われるテキスト形式で保存するべきでしょう。
ここで扱われているモンゴル語はすべて上記の観点から英数字に転記してあります。モンゴル文字については、ベルリン自由大学のOliver Corff博士の転写方法を用いています。これは Mongolian Language Support の中で説明されていますので、詳しくはそちらをご覧下さい。
一方、キリル文字については私独自の転写方法を用いています。予めこれを理解しておかないと、キリル文字で書かれたモンゴル語が殆ど何も読めません。利用の前に御一読するようお願いします。
| ・TrueType Font による モンゴル語の表示・印刷 |
|---|
| TrueType Font of Mongolian and Cyrillic |
ラテン文字(というより英数字)でモンゴル語を表記するというのは、電算処理の上で便利ではありますが、読む時、特に人に読ませる時には却って不便です。そこで、ラテン文字転写したものを通常のモンゴル語の文字に戻して、表示や印刷をする方法を用意しました。
TrueType Font を用いていますから、特別なハードウェアやソフトウェアを導入しなくても、手持ちのワープロ上で(ワープロ専用機では無理だと思いますが)すぐにモンゴル語を利用することができます。日本語や英語など他の言語と同時に使用することができます。ワープロが多言語対応である必要はありません。
前記のCorff式で書かれたモンゴル文字と、致元式で書かれたキリル文字のいずれも表示・印刷することができます。実は、このページの冒頭に掲げたモンゴル文字の画像も、この方法で作られたものです。
| ・モンゴル語による言語学術語を調べる手引き |
|---|
| Contents of " linguistic terms in Chinese and Mongolian " |
これは、『語言学名詞術語』(漢蒙対照名詞術語叢書)内蒙古教育出版社 (c)1987
ISBN 7-5311-0197-1 の目次です。
この本は中国語の見出しからモンゴル語を検索する様になっていて、中国簡体字や北京語の発音を知らないと、利用が非常に困難です。しかし、漢字を日本式に直して電子化してしまえば、(日本人にとって)検索が極めて簡便になります。
勿論、中国語における言語学の術語を知らないと目的のモンゴル語は探せません。
これは目次でしかありませんから、別途、上述書を入手して利用して下さい。(呼和浩特市では、たくさん売っています。日本でも中国書籍専門店で手に入るでしょう。)
なお、
$kelen-u sinzilel-un ner-e tomiyan-u tayilburi toli
(『語言学名詞術語解釈詞典』内蒙古教育出版社(c)1996)
ISBN 7-5311-1986-2 という辞書もあります。これはモンゴル語の見出し・モンゴル語の語義解説ですから、中国語を知らなくても使えます。
| ・モンゴル語語尾・接辞一覧 |
|---|
| List of Mongolian suffix |
モンゴル語の語尾・接尾辞は夥しくあります。この一覧はその総てを網羅しているわけではありませんが、『四週間』や辞書に書かれていないものも多く載せてあります。 ここで使われているキリル文字の転写は、致元式Ver.2です(その筈です。昔に作ったので忘れてしまいました)。いずれ、現行のVer.3に書き直す予定です。その際には内容も大幅に改訂することになるでしょう。
| ・キリル文字の正書法について |
|---|
| Mongolian orthography by Cyrillic |
キリル文字での正書法と、その問題点。母音調和の規則など、モンゴル語の基本についても書いてあります。 ここで使われているキリル文字の転写も、致元式Ver.2です(その筈です。昔に作ったので忘れてしまいました)。
『ほんとに楽しいモンゴル語』は、この他にも便利なページを増やして行く予定です。「モンゴル語のここが分からない」「こんなページがあれば使える」という御要望・御意見は、致元まで送って下さい。
使用言語は、日本語・モンゴル語・英語のいずれか(日本語が望ましい)でお願いします。応えられる部分は応えて行きたいと思います。